NTTComを退職してNTTComに入社します
TL;DR
平成から令和への時代の変遷とともにNTTComを退職し、スペシャリスト社員としてNTTComに入社し、新たな人生を歩みます。
仕事としてはSDNのテックリードとしてNTTComのクラウドのSDN基盤のStabilityとScalabilityの向上に引き続きチャレンジしていきます。
一階級飛び級して課長相当のロールの仕事をして、終身雇用と年功序列と労働組合の轍から外れる人生を歩むことになります。お給料もあがります。
これからは、短期的にはテックリード→アーキテクト/エンジニアリングマネージャー→CTOのような感じで、NTTComの中でのエンジニアのキャリアアップのロールモデルとして活躍し、道を切り開いていきたいと思います。
長期的にはNTTComに限らず、ネットワークのおもしろい案件を渡り歩いて請け負っていく、エンジニアやエンジニアリングマネージャーとして生きていこうかなと思います。おもしろい案件があればいつでもお声がけお待ちしております。
どしたん?
実は年明けから転職活動をしていました。理由としては
- 知り合いから一緒に仕事をしたいと誘われていたおもしろい案件が複数あった
- 年末のイベントで「エンジニアの給与が低い」という意見に対して社長が「自分の市場価値を考えろ」と煽ってきたので測りたくなった(最下部に補足追記あり 2019-05-01 18:30)
- 転職活動を経験しておかないといざという時に失敗すると思ったので、全部落ちてもいいからとりあえず経験値を積もうと思った
- 年末年始と社内で不信感の溜まる出来事が立て続けに起きた
- 大きい仕事が一区切りした
- ちょうど切りの良い年齢だったので、年末年始の考える時間で、自分の人生はこのままでいいのかと不安に思った
- NTTの中でこのまま出世するにしても、他の会社を知らないまま偉くなりたくないなと思っていた
という要因がたまたま同じ時期に重なったというのが大きいです。
いくつかの会社から無事に内定をいただきまして、うち1社でネットワーク&ソフトウェアエンジニアとして最強のデータセンターネットワーク&クラウド基盤を構築しようと、転職する気満々で円満退職に向けて社内調整を行っていたのですが、いろいろなことがあって、結果としてNTTComに残ることにしました。内定を頂いた会社の皆様にはご迷惑をおかけして本当に申し訳ないです。
何があったん?
もともと社内でたくさんの先輩方から目をかけて頂いていたので、転職に際して強い引き止めがあることは予想していました。なので自分が何がやりたくて辞めるのか、なぜその会社に行くのかをちゃんと説明して、納得はしてもらえないだろうけど、理解はしていただいて、それから辞めようと思い、お世話になった方々に仁義を切って回っていました。
そこにこの記事ですよ。
「おしかけラグビー」というキャッチーなフレーズが話題になってTwitterやはてなのエンジニア界隈で大炎上したわけです。辞めるつもりの会社とはいえ愛着はあったし、今辞めたらラグビーボールを投げつけられたから辞めたと勘違いされかねないので、これはいかんとすぐに火消し記事を書いたわけです。
そしたらはてブでも反響があり、ねとらぼの記事にもなり、誤解はある程度解けて、徳力さんにもべた褒めされたわけです。
これらの記事は社内でも色んな人に見られて、感謝や好意的な反応、応援をいただきました。そして僕は内心「次の記事、退職エントリーなんやけどどないしょ…」って冷や汗をかきつづけていました。
こんな出来事がタイムリーに起きてしまった結果、結論から言うと、この記事で言及されている新キャリアパスの「スペシャリスト社員」として、キャリアップしていくモデルケースになっていくことにしました。
どゆこと?
記事にも書かれている通り、スペシャリスト社員自体はもともと社内に密かにいたのですが、誰がスペシャリスト社員なのかも公にされていない状態でした。また、スペシャリスト社員自体が正社員の劣化版のような状態で始まっていました。しかしながら今は業界他社と競争力のある環境で人材を確保するための枠であり、多種多様なキャリアアップを実現するための制度となろうとしています。
仰々しくいいましたが平たく言うと、やっとIT系企業では普通の雇用が始まったということです。スタートラインに立っただけなんですが、この一歩はNTTのようなトラディショナルな日本の大企業にとっては大きな転換だと感じます。
そして私自身がこの制度で転身し、後輩のエンジニアたちの道標となるということが、NTTComを変えて優秀な若手エンジニアの環境や待遇を良くする方法を悩んでいた中で、非常に魅力的な選択肢として心に響いたので残る決心をしました。
その決心の土台として、今の仕事がチャレンジングで面白かったのと、今のチームが最高に良いチームだったことは非常に大きかったです。
なんで退職?
スペシャリスト社員になるために雇用替えを行うので、一旦退職という扱いになります。退職金もいただきます。そしてNTTの終身雇用&年功序列のシステムから外れます。
そういやこれまたタイムリーに経団連会長が終身雇用のギブアップ宣言をされましたね。NTTの業務自体はなくなるとは思いませんが、経営する主体は変わることはあるんじゃないかなと思います。その時にいくらNTTとはいえ勤続年数が上がるに連れて給与が上がるシステムは全くもって期待できないと思います。
そしてスペシャリスト社員ということで職務型(いわゆるJob Description型)の雇用体系に変わります。なので今のポジションが無くなったら、どうなるかわかりません。
というわけで僕自身は一度終身雇用を捨てた身であって、転職先がたまたま同じ会社だっただけという認識です。なので常に転職市場に繰り出すことは考えています。
給料あがったの?
あがりました。他社とある程度の競争力のある水準まであげていただきましたし、職位としても非管理職の役付きになってすぐにもかかわらず、管理職である課長相当のロールにあげていただきました。次の職位にあがるためには3年とか一定期間を待って試験を受けないといけない中、実質一階級飛び級したことになります。これは実力さえ示せば勤続年数に関係なく上の役職相当の仕事ができるということで、トラディショナル・ジャパニーズ・カンパニーにおいては大きな変化だと感じています。逆に言えば育成の猶予があった3年をすっ飛ばして、その職位としての結果を求められる過酷な状況に自分を追い込んだということです。
また、スペシャリスト社員=給与アップというわけではありません。JDベースの仕組みですので、当たり前の話ですが、そのポジションの会社にとっての重要性や、その人に期待する役割などによって給料は決まります。
そのような結果、私より職位が高い人に比べて額面上は高い給料になっている場合もあります。NTTのような序列のある会社の中でこの状況は精神的に結構キツイです。でもどこかでこの逆転現象を起こさないと、自分より若い人たちの給料も上がらないと思ったので、自分がこの役目を買って出ることにしました。
終身雇用から外れたので退職金とかはありませんし、住宅補助や扶養手当のような一部の福利厚生もありません。そしてなにより将来の保証がありません。その分を考えた時に本当に良かったのかどうかはまだわかりません。が、どうせ辞めるつもりやったんやからええやろと吹っ切りました。
あがったとは言っても id:kumagi よりは安いし、彼らはそこから上がっていくことを考えると、まだまだGAFAへの流出は防げない水準であると関係者には伝えてあります。僕が内定を頂いき転職しようとしていたところはGAFAではなく国内企業です。たまたまこういう特殊なきっかけがあったので私の流出は防げましたが、待遇や環境を総合的に考えると、実は国内企業への流出を防げる水準にも全然なっていないということは言っておいたほうが良いかもしれません。
何の仕事やんの?
そもそも今まで何の仕事をしてるのかあまり公にしてませんでしたが、エンタープライズ業界向けのクラウドサービスのSDN基盤を作ってました。ひとまずはこれまで通りの仕事内容になるのですが、テックリードの肩書も正式にもらえる予定なので、引き続きチームを引っ張ってSDN基盤のSREを実現してStabilityとScalabilityの向上にチャレンジしていきたいと思っています。対外活動も引き続きやっていきます。
Why NTTCom?
NTTComは国内でIaaS/クラウドの開発ができる事業者の中で最大規模だと思っています(ちなみにNTTドコモもやってるよ)。AWSやGCPの開発をやりたいと思うと、どうしてもアメリカの本社に行かないといけないですよね、知らんけど。今のチームにJoinしたときに中身を知って「え?NTTComがこんなにすごいサービス作ってるの!?」ってびっくりしました。
自分たちで開発しているからこそ、障害が起こると自分が日常で使っている色々なシステムやサービスが止まってしまう怖さや責任感もありますし、だからこそ「NTTComのクラウドのネットワーク全部俺」って言える楽しさもあります(もちろん私だけじゃなくてみんなで作ってますが、そういう気持ちでいられるということです)。それを結構魅力に感じています。
まだまだ直さないといけないところはたくさんあるし、日本企業の古い文化や体質が残っているところもたくさんありますが、労働組合が強く労働者が守らていて休みも取りやすい超絶ホワイトな会社であるというNTTの従来型の良い面も保ちながら、オフィスも新しくなったし、リモートワークもできるし、フレックス勤務もできるし、副業もできるし、Job Description型の雇用体系もできるし、会社自体も時代に合わせてここ数年で劇的に改善しています。
従来どおり適度な仕事で安定した人生を送りたい方にはもちろん、不安定な環境でもいいので自己実現したい尖ったエンジニアにも、両方の人たちにおすすめできる会社になってきています。
※ 自席ですが狭く見えるのは写ってはいけないものが写らないように狭い範囲だけを撮っているからです。なおMacBook 1画面派でモニターはあんまり使ってませんので私はデュアルディスプレイにはしてません。ぬいぐるみは「おしかけぷよぷよ部」を始めようと思ったからです。
さいごに
この件についてはたくさんの関係者の方に動いていただきました。本当にありがとうございました。
ところでお客様の中に、ネットワークのすべての分野に精通していて、クラウドコンピューティングが好きで、データセンターネットワークを作るのが好きで、特にBGPとかEVPNとかVXLANとかが好きで、でもVRRPとかSTPとかARP/NDとかエッジ・ホスト側のネットワーク技術も好きで、tcpdumpでパケットレベルのデバッグをするのが好きで、C++とPythonの読み書きデバッグが好きで、Linuxのカーネルやネットワークスタックが好きで、OpenStackが好きで、CassandraとかRabbitMQとか分散ミドルウェアが好きで、docker/k8sとかのコンテナ技術が好きで、英語をしゃべるのが好きなエンジニア、いらっしゃいましたらTwitterとかで @yuyarin までご連絡ください。
それでは令和時代もよろしくお願いいたします。
追記
『「エンジニアの給与が低い」という意見に対して社長が「自分の市場価値を考えろ」と煽ってきた』という部分にネガティブな反応が見受けられたのですが、まずこれはこれは私個人に対して向けた言葉ではなく、意見を出した人個人に「君は市場価値がない」という意味で言ったわけでもありません。
社長は社会人として当たり前のことを指摘したに過ぎないと思っています。何の根拠もなく給料を上げろというのは筋が通っていませんし、NTTヨーロッパの人の話を聞いていても他社提示額を以って給与交渉をするようですので、そのような方法を以って話をしようという意図だったのだと思います。社長からすると、会社全体で見たときに市場価値より高い給料で雇われている人がたくさん見えるのだと思います。
そのようなわけで、私も反発して感情的に転職をしようと思ったわけではなく、なるほど確かにと理性的に納得して、それを確かめるために転職市場に繰り出そうと思った次第です。
追記2
有益情報をいただきました!
ジョブディスクリプション型の契約雇用で生きていくというのは今後増えていくでしょう。産業医として1つだけ言いたいのは、ノーパソ一本だと首を傷めるので対策してくださいということです! #働き方改革 #産業医 #IT系https://t.co/InQksZQiWm
— ヤマコー👓リハ医・産業医 (@rehabithc) May 1, 2019